熊本県立大学 3年 H.Kさん
差別とは何でしょうか。例えば、耳の聞こえない人には話しかけずに手話を使ったり、車いすを使っている方は並べない列だったり、障がいを持つほとんどの方は、「健常者」と異なる扱いを受けたことがある方がほとんどだと思います。わたしはおれんじ村での実習を終えて、未だに何が差別で、何が配慮で、何が障害を持つ方への正しい接し方かが分かりません。ただ、障害を持っていることを理由にそれと関係のない嫌がらせや区別をすることが差別になるのかなと自分なりの考えを持つことができました。私自身、名前を覚えるのが苦手だったり、自分から声をかけることが難しかったりすることがあります。でも、そんな私におれんじ村の方は何度も名前を教えてくれたり、わたしにたくさん質問をしてわたしの事を知ろうとしたりしてくれました。普通の事だと思う人が大半かもしれませんが、そんな普通のことを、障がいのあるなしによって変えることが本当の差別だと思います。言い換えがヘタですみません。
話が少し変わりますが、上記に加えて自分の中での考えを認識し、他の方との考え方の差に気づくこともできました。
実習の2日目にMさん夫婦のお話を奥さんご本人にお話ししていただく機会がありました。そこではMさん夫婦の「障がいのある人も障がいのない人と同じ人生の選択肢があるべきだ」というお話が印象に残っています。わたしも頭の中では確かにそうであった方が平等だと分かっているのですが、子育てをする上で娘さん本人の気持ちや考えについてのお話がなかったり、子どもと3人で暮らすことが夢という、なんだか漠然とした願望というか、理想ではあるのだけれど、結局ヘルパーさんがいないと暮らせていけない現実(結果的に家族3人と周りの方が幸せなら私が意見することではないと分かっているのですが)を聞いたりして言葉にできない気持ちがあふれてしまいました。実はMさん夫婦のお話は実習に来る前からSNSで見たことがあり、「なぜこの人は子を産む選択をしたのだろうか」という疑問がありました。しかし、ご本人の前でそれらの疑問を直接聞く勇気はありませんでした。それでもずっとお話を聞き終えた後も心の中で何かがつっかえていて、もやもやしたまま2日目が終わってしまいました。
それからおれんじ村やエコネットみなまたさんでたくさんの経験と学びを得て、ついに最終日になりました。最終日にはおれんじ村エコネット合同研修がありました。そこでIさんという方のお話がありました。そこでは「心の中にひっそりと隠れていた偏見」や「障がいのある方もない方も関係なく、住みやすい街作り」、「やっぱり、という考え方」などについてお話しされていました。おれんじ村でも「共働共生」という言葉があり、やはり「障害のある人もない人も一緒に働いて一緒に生きる」という意味だと伺いました。(この内容についてもとても共感することや学びがあったのですが長くなりすぎるので割愛します)
ここでやっと2日目にあった自分の中のもやもやを解決することができました。「障がいのある方もない方も関係なく一緒に生きること」と「障がいのある方もない方も関係なく同じ人生の選択肢があること」は似ているようで全く違うことだと私の中では腑に落ちることができました。障害のある方もない方も人生において出来ることと出来ないことはあるし、どんな仕事をするとか結婚するとかはその人の選択で自由に、自分たちの希望や責任でするべきことだと思います。ただ、人生の選択をすることにおいて、自分のすることについて責任を負えないことは障害のある人においても、障害のない人においても「選択しない」という判断が必要だと思います。
Mさん夫婦を否定したいとか、そのような意図はありません。むしろMさん夫婦はおれんじ村やその他の支えてくださる仲間がたくさんいらっしゃって、そのなかでしっかり子育てをして、娘さんが幸せならむしろとても素敵なことだと心から思います。さらにこのような取り組みが行われ、広がっていくことはより多くの方の人生の選択肢を増やすことにつながると思います。ただ、それもすべての希望する人に行うことはできないため、これもまたMさん夫婦の人生の選択肢にあったのではないかと思うのです。ですから、同じ人生の選択肢がなくても差別ではなく、仮に障がいを持つことになったとしてもそれはそれで自分の人生だと思うのです。
また、事前挨拶で教えていただいた、「その人に合った、出来ることを探すこと」がおれんじ村でできる支援の形だということを実感することができました。どんな人もその人が出来る役割、仕事があり、みんながいきいきと生活している中で一緒に生活できて本当に楽しく、学ぶことができました。この実習での経験を活かして生徒たち一人一人が得意なことや各々の個性に向き合って、なりたい自分になれるように手を差し伸べることのできる理想の教員に近づけるようにこれからも頑張りたいと思います。
5日間の短い実習でしたが、本当にありがとうございました。