新出生前診断のニュース

8月28日、報道によると新しい出生前診断が、
国内2つの病院で導入される見込みとのことでした。


新しい出生前診断とは、妊娠10週目以降の妊婦の血液で、
99%の確立で胎児の、ダウン症を含む3つの染色体異常を
みつけることができるというものです。


日本産婦人科学会は、
「新診断法をはじめとした新たな分子遺伝学的検査には、
専門的知識が求められるとした上で、妊婦が検査の意味を理解したり、
結果が出た後のサポートを行ったりするため、
「専門家によるカウンセリングが必須」と強調した。
社会に大きな混乱を招く懸念があるとして、
遺伝子異常のリスクが低い妊婦など広範囲への実施は慎むべき。」
「慎重に取り扱う必要があることをご理解いただきたい」
(「」内産経ニュースより転載)
との声明をだしています。
また、同声明で、
遺伝子の変化に伴う疾患を「人の多様性として理解し、
その多様性と独自性を尊重する姿勢で臨むことが重要」
(「」内産経ニュースより転載)、とも訴えています。


人の多様性、まさしくそうだと思います。
現在労働センターにもダウン症の方がいます。
診断がどういう用途につかわれるか、はっきりしていませんが、
染色体異常が見つかった場合に、その子を産むか産まないかの
判断の材料になるのなら、その方の存在の否定になると思うんです。


染色体異常に伴う疾患やいろいろな障害をもって、
今の社会で生きていくのは、不自由が多いことと思います。
また、障害を前向きに「個性」と呼ぶには、
あまりに社会の障壁が大きすぎます。
ですが、それは、人間を取り巻く環境や考え方のせいであり、
その個人のせいではないはずです。
ダウン症の方や、その他疾患を持つ方の否定につながることを、
「科学の進歩」という名の下に進める前に、
人の「世」の多様化をすすめるべきだと思います。


国立病院を含む2つの病院では、
院内の倫理委員会などの承認がとれれば、導入するとのことです。
でも、人間の存在の根幹にかかわる大切なことなので、
「病院内」の議論で進めるのではなく、
もっと公の場での決定が必要なのではないでしょうか。

血液検査だけで診断できるということは、
産婦人科にかぎらず、医師や看護士であれば、
誰でも可能ということです。


この診断法の導入にはもっと議論が必要と思います。
そして、くまもと障害者労働センターは、
この診断法の導入に断固反対します。


文責:くまもと障害者労働センター 藤堂健司